臭いラボ

疲労臭ってどんな臭い?疲労が原因で体臭が臭くなるの?

近頃では“スメハラ”(スメルハラスメント)という言葉が一般的となり、ニオイに対する意識が一段と高くなっています。普段から、清潔を心掛け、汗や皮脂の臭い、口臭、加齢臭など気になるニオイの対策をしっかり行っているのに、何か嫌なニオイがする……。その不快なニオイの原因は“疲労臭”かもしれません。
この記事では、疲労臭の原因と対策などについて詳しく解説します。

疲労臭の臭いの特徴はコレ!

疲労臭は、主に血液中に溶け込んだアンモニアが、汗腺や毛穴などを通し、皮膚ガスとなって皮膚表面から放出されることが原因で生じます。

疲労臭の主成分はアンモニアのため、その臭いはアンモニア特有の
鼻をつくようなツンとした臭い」「卵が腐ったような臭い」「イオウ(硫化水素)のような刺激臭」、場合によっては「し尿の臭い」などに例えられます。

また、体力を使う仕事に携わる人など、肉体疲労が激しい状態になると脂質に起因する甘酸っぱい臭いが生じることもあります。さらに、疲労やストレスの影響により腸内環境が悪化するとし尿のような耐え難い悪臭が発生する場合もあります。

こうした臭いは、根本的には“疲労“が原因で起こるため「疲労臭」と呼ばれます。

疲労臭はなぜ出る?

食事などから摂取したタンパク質などを分解する過程で、体内には毒性のあるアンモニアが生じます。

本来、体内で発生したアンモニアは、肝臓のオルニチン回路で分解され、最終的には無毒な尿素となって排出されます。

しかし、疲労により肝臓の解毒機能がうまく働かなくなると、アンモニアが十分に解毒されず、血液中のアンモニア濃度が高くなります。

このアンモニアが汗腺や毛穴など皮膚表面からガスとなって放出されるため、体からアンモニア臭のような不快な臭いが生じるのです。

また、肝機能が低下することにより、有毒な活性酸素が増加します。活性酸素は臭いの元となるパルミトレイン酸(脂肪酸の一種)や過酸化脂質をの合成を促進するため、これらの臭いがアンモニア臭と混ざり合い、さらに不快な悪臭となり皮膚から放出されます。

さらに、肉体疲労時など体力の消耗が激しい場合、糖質以外に脂質(脂肪)がエネルギーとして使われます。脂質が代謝される過程ではケトン体という物質が生じます。

ケトン体には、ケトン臭という独特の“甘酸っぱいニオイ”があるため、疲労の度合いが強くなることで、体から甘酸っぱい強いニオイが出ることもあります。

そのほかにも、疲労により腸内細菌のバランスが崩れるとタンパク質や脂質の分解・吸収が阻害されるため、腸内で腐敗臭が発生し、それが全身を巡り、皮膚から便やおならのような強い悪臭が生じる恐れもあります。

疲労臭が発生しやすいのはこんなとき

メディケア生命保険が行った「ビジネスパーソンの疲れとストレスに関する調査」によると、20代~50代の男女1,000人を対象に「最近、心身の疲労を感じるか?」との問いに対し、全体の71.5%の人が「そう思う」と回答しています。その理由は人ぞれぞれですが、仕事や人間関係に関する悩みが多いようです。
参照:http://news.medicarelife.com/release/down2.php?attach_id=348&seq=1

もちろん、仕事や人間関係だけでなく家事、育児、介護など、日常生活を取り巻くさまざまな環境の中で、疲れを感じる原因は数えあげたらキリがないほどです。

いつも体がだるい、寝ても疲れがとれない、やる気がわかない、など心身の疲労を感じるときには、疲労臭も生じやすくなるため注意が必要です。とくに、次のような状態では疲労臭が発生しやすいといえます。

  • 慢性疲労
  • ストレス過剰
  • 睡眠不足
  • 肉類の摂り過ぎ
  • 生活が不規則
  • 多量の飲酒
  • 喫煙の習慣
  • 栄養バランスが悪い
  • 肝機能に異常がある
  • 運動不足
  • 肥満
  • 高血糖や糖尿病など生活習慣病がある
  • 月経不順

 
などが挙げられます。

もしかして臭ってる?疲労臭チェックシート


疲労臭は日常生活における、食生活、生活習慣、ストレス、運動などの要因によって、強くなることもあれば、少なく抑えることもできます。次の項目に該当する場合、すでに疲労臭が発生しているか、あるいは疲労臭予備軍の可能性がありますので、自己チェックしてみることをお勧めします。

自己チェックリスト
肉やハム、ソーセージなど肉類が好きでよく食べる
野菜や豆類、海藻類はあまり食べない
朝食を抜くことが多い
いつも体がだるい
寝ても疲れがとれない
やる気がわかない
集中できない
ストレスが多い
毎日、お酒を飲む(1日にビール500㎖または日本酒1合以上)
休肝日がない、もしくは週2日未満
タバコを吸う
運動不足である(息がはずむ程度の運動を1日30分、週3日未満)
デスクワークやパソコン操作などで一日中座っている
パソコンやスマホを常にいじっている
お風呂はシャワーだけで済ませることが多い
自分の枕や毛布から嫌なニオイがする
口が乾きやすい
夏バテしやすい
風邪をひきやすい
冷え性なほうだ

 

上記の20項目中5つ以上当てはまれば、すでに疲労臭が生じている可能性が高いと考えられます。また、該当する項目を一つでも少なくすることは、疲労臭の発生を抑えたり、程度を軽くことにもつながります。

この記事のまとめ

これまでみてきたように、疲労臭の原因や対策については、次のようにまとめられます。
 

  • 疲労臭とは、体の疲労が原因で生じる不快なニオイ
  • 疲労臭の正体は主にアンモニア
  • 体内でアンモニアが過剰になるのは、疲労により肝臓の解毒機能が低下するため
  • 疲労臭は「鼻にツンとくる刺激臭」、「卵が腐ったようなニオイ」、「し尿の臭い」などに例えられる悪臭
  • 疲労臭は日常の“疲れ”だけでなく、食生活、運動、ストレス、飲酒や喫煙の影響などによっても増加する

 

また、疲労臭を予防・改善するには、Rest(休息)Relax(くつろぎ) Recreation(楽しみ)の3つの「R]が大切だといわれます。
体に疲れが蓄積しないよう、日頃から体を労わる心掛けも必要です。
 

(参考文献・WEB)
・「その気になる体のにおい、疲労臭かも」日経ウーマンオンライン
・「そのにおい、気付いていますか?」沢井製薬
・「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」厚生労働省
・「ビジネスパーソンの疲れとストレスに関する調査2018」メディケア生命保険(株)
・「東京で働くビジネスパーソンの疲れの実態に関する調査 2018」養命酒製造
・「その疲れ、デジタル生活のせい?」日経電子版
・『臭いの身体論』鈴木隆・著
・『気になる口臭・体臭・加齢臭』五味常明・著
・『気になる臭いがみるみる消える100のコツ』主婦の友社・編