自己臭症(自己臭恐怖症)は強迫性障害が原因?

自己臭症(自己臭恐怖症)は強迫性障害が原因?

自己臭症とは?病気?

自己臭症とは、ざっくりいうと、「自分の臭いが異常に気になって仕方ない状態」のことです。
例えば、真夏の暑い日にジョギングをしたとします。きっと汗だくになりますよね。
その時に「汗臭いから、シャワーをしよう。」と自分の臭いを気にしたとします。
これは、もちろん病気ではありません。
ですが、もしこの後、シャワーをして汗を流したのに、「あれ?ひょっとしてまだ臭うかも」と思ったとします。
こうなると少し「病気」の要素が出てきます。なぜなら、一般的に考えて、シャワーをした後に汗臭いはずがないからです。

自己臭症と強迫性障害の関係性

みなさんは、「強迫性障害」という病気をご存知でしょうか?

強迫性障害というのは、

  1. 自分でもそうすることが理不尽であるとわかっているのに
  2. 不安に囚われて
  3. 不安を取り去るための行動を繰り返してしまい
  4. そのことで生活に支障が出ている

といった状態の病気です。

一つ、例を挙げて説明します。

あなたが、友人とのランチの約束のために家を出ようとしているとします。一つ目の角を曲がったところで、「あれ、家の鍵を閉めたかな?」と急に不安になって、鍵の確認に家に戻ります。そして、鍵がきちんとかかっていることを確認して再度出かけます。

ここまでの行動は、普通の人にでも起こりえることです。

でもまた一つ目の角に差し掛かったところで、「あれ、家の鍵を閉めたかな?」とまた不安になります。常識で考えれば、さっき閉まっていることを確認しているので鍵が開いている可能性はありません。でも、そう思っても、やっぱり不安で不安でたまらないのです。

1.鍵が開いている可能性はないと分かっているのに、2.どうしても不安がぬぐい去れないのです。

ではどうするか。
3.また家に鍵がかかっているか確認に戻ります。そして鍵が閉まっていることを確認して安心する。でもまた一つ目の角にさしかかると同じ不安にとらわれる。4.結果として、友人とのランチの約束になっても家の前と一つ目の角を往復していて友人に怒られる。

これが強迫性障害です。

不安は、もちろん、鍵がかかっていることには限られません。

人によっては、「左折すると誰かをひいてしまうのではないか」と不安になって左折ができない人もいますし、「家から外に出ると誰かを殺してしまうんじゃないか」と不安になって家から出られなくなっている人もいますし、「自分の手が汚れているのではないか」と不安になって手を洗い続けている人もいます。

ここで、「自分が臭いと思われているんじゃないか」「自分は臭い」といった不安に囚われて必要以上にシャワーに入る生活をして、日常生活に支障が出ている人がいるとすると、それは自己臭症から強迫性障害が発症していると言えます。

その他に考えられる自己臭症の原因


他にも、「自分の臭いが気になる」というのが病気レベルで現れる病気があります。

思春期妄想症・妄想性障害・統合失調症

思春期妄想症というのは思春期によく現れやすいもので、妄想性障害というのは逆に中高年に発症しやすい病気です。
先ほどの強迫性障害では、「自分が臭うという今の考えは理不尽である」と理解していることがポイントでした。これが「自分はきっと臭っているに違いない」「自分は臭っている」と確信している場合、それは強迫性障害ではなく「妄想」になります。

そうなるとそれは強迫性障害ではなく「妄想」を主体とした病気となり、症状が妄想だけであれば、思春期妄想症や妄想性障害の診断がつきます。

もし、「お前、臭いんだよ」「近づかないでおこうぜ」などという第三者の声が頭の中で響いたり聞こえたりする場合は、統合失調症を発症している可能性もあります。

身体醜形障害

これは、基本的には「自分の見た目が醜いのではないか」といったことに囚われて、容姿を非常に気にする状態です。「自分が醜くないことを確認」するために、鏡を必要以上に見たり、整形を繰り返したりします。しかし、そもそも「自分の見た目が醜いのではないか」という思い自体が思い込みのようなものなので、整形をしても満足できる結果は得られません。結果的に引きこもりになったりします。
この病気は自己臭症を合併することが多く、そうすると、「自分が醜いせいで」「自分が臭いせいで」「他人に迷惑をかけている」と考えるようになります。

年齢や性別の割に、「ブサイク」「可愛くない」「ブス」という言葉を使わず、みな一様に「私は醜い」という単語を使う印象があります。

社交(社会)不安障害(俗にいう対人恐怖症)

これは、社会と交流することや人と関わることが怖くなったり不安になったりして引きこもってしまったり、人と関わる場面を避けるように行動してしまう状態のことです。
この病気の一部に自己臭症が原因でそういった状態に陥っている人がいます。ただし、社交不安障害が先か、自己臭症が先か、というともはや分からなくなっていることが多いです。どちらが先かを解明することに意味はないのであまりそこは深掘りしないほうがいいでしょう。

自臭症を克服するには?

自己臭症を克服する行動療法

まずは「自分の臭いが気になっても対処しない」でいてみましょう。対処することで、「臭うのではないか」という思いを助長してしまいます。

全く対処行動をしないのは無理かもしれませんが、まずは5分でも10分でも、対処行動を起こすのを遅らせてください。そして、その時間を徐々に伸ばしていきます。

対処行動をする前には信頼できる誰かに自分が臭うかどうかを聞いてみてください。おそらく「臭くないよ」という返事が返ってくると思います。

「すぐに対処しなくても臭わない」という経験を積んでいくことで自分の思いが思い込みであることが理解できていくと思います。

時間はかかりますが、コツコツと頑張ることが大事です。

心療内科(精神科)を受診してカウンセリングもしくは投薬治療を受ける

自分の力だけでは難しい、という方は、心療内科(精神科)のクリニックに行ってみましょう。

お医者さんによる精神療法や、臨床心理士さんによるカウンセリングが受けられます。受けられるアドバイスは上に書いたものと大きく変わらないかもしれませんが、適宜励ましてもらうことで、一人だけではないので行動が続きやすいです。

また、必要であれば薬による治療が受けられます。

特に、強迫性障害や他の病気を合併している場合、自分の行動だけで改善していくのは本当に大きな意思と努力が必要です。一時的にお薬の治療に頼るのもいいかもしれません。

一生薬をやめられないのではないか、という心配があるかもしれませんが、自己臭症や強迫性障害は適切に治療を行えばいつか薬をやめられる日は来ます。

(統合失調症にかかった場合は一生治療が必要なことがあります。)

この記事を読むことで、あなたが困っていることに対して、少しでも楽になるヒントが見つかればと思います。

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精神保健指定医:岡田夕子

精神科医として精神科病院で勤務中 【保有資格】 ・医師免許 ・精神保健指定医 ・日本精神神経学会 専門医

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