本当は臭っていないのに他人のしぐさや言動が理由で「自分は臭いんだ」と思い込んでしまう自臭症。まわりの人に相談できず、一人で悩んでいる人も多いようです。
なかには人に臭いと思われることへの不安感から他人と接したり外出したりするのが怖くなり、引きこもりがちになってしまう人もいるのだとか。
体臭に悩んでクリニックを受診したのに「ニオイはないですよ」と言われてさらに悩んでいる人は、ひょっとして自臭症かもしれません。
今回は自臭症の治療方法を詳しく紹介していきます。
自臭症は何科で診てもらうの?
体臭の治療というと、皮膚科や形成外科、美容外科。
口臭の治療なら歯科…と考えますよね。
もし、あなたが体臭を気にしていて、これらの科に行ってニオイの悩みを訴えても「臭ってない」「気にしなくて良い」というようなことを言われたり、実際に機械を使って測定しても問題のない数値が出たりしたら、あなたのニオイの原因は自臭症の可能性があります。
そして、もし自臭症の可能性があるなら行くべきなのは精神科や心療内科。
なぜなら、自臭症は「精神的な病気」だからです。
というのも、自臭症は「周りの人も本当に臭いと感じている」のではなく「自分は臭いんだと思い込むことで、実際はない体臭を幻臭として感じてしまっている」状態です。
“幻臭”とは感じないはずの臭いを感じることで、本当はその臭いは存在しないのですから当然周りの人や医者に聞いたり臭い測定器を使ったりしても「臭いはない」と診断されてしまいます。
しかし、患者本人は幻覚とはいえその臭いを感じているので「なぜ周りの人はわかってくれないのか」と余計不安になってしまうのです。
自臭症の治し方は2種類[心理療法と薬物療法]
自臭症の治し方は2種類で、心理療法と薬物療法があります。
これらの治療を行いながら、「自分は臭くない」と思える様に導いていくことになります。
また、自臭症の人は自臭症の他に対人恐怖症やうつ、パニック障害、強迫性障害などを同時に患っている場合も多いのでそれらの治療も併せて行う必要があります。
ただし、治療をすれば必ず治るというものではなく、また薬を飲んだらすぐに治るというものでもないため焦らず時間をかけてゆっくりと治療していく必要があります。
心理療法による自臭症の治し方
自臭症を心理療法で治療する場合、対話や訓練などが治療として選ばれます。
なぜ自分を臭いと思うのかということや、対人状況で誰かを臭いによって不快にさせているということはなく、周りの人が咳き込んだり口元をおさえたり鼻をすすったりするなどしたとしても、それは自分の体臭が原因ではないということなどを根気よく話していきます。
このようにして、実際の臭いと本人が感じて悩んでいる臭いの食い違いを修正するのです。
自臭症においてこの「現実と自分感じているものの食い違い」というのはかなり大きなポイントになります。
自臭症の人は臭気テストの結果や医師、周りの人に「臭いがない」と診断されても「この結果は間違いで、自分は臭い。現にあの時、隣の席の人が鼻をすすっていたのは自分が臭いからだし、この時に友人が咳き込んだのも自分の臭いのせいだし…」と客観的な見地からの意見を信じようとせず、あくまで自らの主観のみで自分は臭いと思い込んでしまうことが多いです。
これは、そもそも特に臭いに悩んでいなどいなかったのに他人に「臭い」というニュアンスのことを言われ、その時の恥ずかしさやショックから「自分ではわからないけれど、臭いんだ」と自分の鼻を信用できなくなっている人も多く、疑心暗鬼になっている人が非常に多いからです。
さらにその心理状態から自分は臭いという思い込みを正当化するための理由付け(=他人が咳き込んだ、鼻をすすった、マスクをしている等の生活行動)を無理矢理にでも探し出して自分の臭いにこじつけようとしてしまいます。
このような強い思い込みやこじつけを行わないようにするためには、根気よく「あなたは臭くないですよ」ということを伝えていく必要があります。
この対話は複数人で行うこともあり、色々な人の隣に座って会話をするなどし、匿名で相手の臭いが気になったかどうかなどのアンケートに回答します。
すると自臭症の人の多くの場合は本当に体臭が強いということはないため、「不特定の第三者も自分のことを臭くないと思っている」「自分を臭くないと評価してくれる人がたくさんいる」という自信に繋がります。
他にも、恐怖心の強い人の場合はあえて人混みに行ったり電車やエレベーターなど密室に入ることもします。これは通常恐怖や不安を感じる環境にあえて身を置くことで、徐々に慣れさせて恐怖を取り除く訓練になります。
このような対話や接触を何度も繰り返して治療を行います。
薬物療法による自臭症の治し方
薬物療法の場合は「臭いを消す薬」を処方されるのではなく、自分の臭いが気になるあまり気分の落ち込みが強くなる抑うつ状態(いわゆる鬱状態)になってしまっている場合や、人に臭いと言われるのが不安で対人恐怖やパニック障害になってしまっている場合などに不安を緩和したり気分を楽にしたりする薬が処方されます。
あくまでも“自分が臭いと思われている不安”を緩和する薬を処方することで不安感を取り除き、臭いを発していないと徐々に自覚できるようにサポートをしていくのです。
処方される薬は『SSRI』と呼ばれる抗うつ薬で、正式名称はSelective(選択的)Serotonin(セロトニン)Reuptake(再取り込み)Inhibitors(阻害剤)です。
一般的な商品として有名なものは、ジェイゾロフト、パキシル、デプロメール、ルボックス、レクサプロなど。これらは一度分泌された脳内のセロトニンが再取り込みされるのを防ぎ、脳内のセロトニン量の減少を抑えることで抗うつ作用をもたらす薬です。
また、「選択的セロトニン~」という名前ではありますが、セロトニンは脳内でノルアドレナリンの作用を抑える働きも持っており、パニック障害はノルアドレナリンに関与する神経の異常興奮によっておこるとされているため、ノルアドレナリンやドーパミンなどの脳内神経伝達物質に分泌量に対する改善効果が確認されている薬剤もあります。
これらの他にも、SNRIと呼ばれるセロトニンとノルアドレナリンの伝達物質の再取り込みを阻害するや「抗不安薬」などが処方されることもあります。
こういった薬を処方してもらい、不安を緩和・軽減させながらカウンセリングなど心理療法を併用し、時間をかけて症状の改善を目指します。
また、この他にもボトックスなど汗を止める効果のある薬剤や強い制汗剤などを使用し、「もう汗は出ていないのだから大丈夫」と思わせることで自臭症の改善につながる場合もあります。
特にワキガ恐怖が強い場合などはワキの皮膚を数ミリ切開して実際にアポクリン腺があるかどうかを目視でチェックし、ワキガではないと実際に自分の目で見て確認させる方法などもあります。
まとめ
自臭症の治療はとにかく「今自分が感じている臭いは現実のものではなく、不安感が原因のまぼろしである」と認識することが重要です。
けれど、周りの人がいくら「臭くないですよ」と言っても当人は実際にそれで悩んでいるわけですから、すぐに納得して気持ちが変わるというのはなかなか難しいもの。
臭気計など、機械の数値で目に見るとわかりやすいですが、それでも思い込みが強く「信じられない」という人も多いのです。
簡単に治る病気ではありませんし、明確に「コレをしたら治る」というものでもありません。ですが、どんな形であれ思い込みが大きな原因として関わる病気であることは明確なので、ニオイの原因が無いと自覚させることが自分の放つニオイへの不安の軽減、ひいては自臭症の改善へとつながっていきます。
自臭症の症状や原因などはこちらで詳しく紹介しているので、気になる方は是非読んでみて下さい!
r .t
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