男女の間で人を好きになるとき、容姿や性格で選ぶことが、第一と考えられていることが多い傾向にありますが、実はその中には自分では意識せずに本能で感じ取っているものがあります。
彼、もしくは彼女の体臭を嗅いだ時に、何気なくいい匂いだと感じたことはありませんか?もし、そういった経験があったらそれは通称、恋愛遺伝子と呼ばれるHLA遺伝子による可能性があります。
多かれ少なかれヒトは、本能的にこのHLA遺伝子で嗅ぎ分け、結婚相手を選んでいるのかもしれません。
「良い匂いだと感じる人とは相性が良い」は本当?
動物と比べると感度は低いにしても、人間も「におい」で異性を判断することを無意識的に行っているのです。
特に女性は一生涯の間で子供を産める期間が限られているので、より強い子供を作るために、より強い遺伝子を持った男性を求めます。より強い遺伝子とは、より自分より遠い遺伝子を持つ異性を意味し、自分と異なるHLA遺伝子を持つ相手を「におい」を介して選ぶのです。ヒトは本能的にDNAを介して相性を見極めているのです。
恋愛遺伝子?HLA遺伝子とは
我々には通称、恋愛遺伝子と呼ばれる遺伝子が存在し、その遺伝子が遠ければ遠いほど、そのタイプの遺伝子を持った異性に惹かれると言われています。
その遺伝子が、HLA遺伝子(ヒト白血球抗原)と呼ばれるものなのです。
HLA遺伝子は、Human Leukocyte Antigenの略で、病原体などから体を守るための働きをする、つまり免疫を司る遺伝子なのです。
体の中に多くのHLAのタイプがあれば、それだけ多くの異物の侵入から体を守ることができます。そのため、よりHLA遺伝子の遠い異性と結ばれることで、免疫力のより高い子供を産むことができ、よりバラエティーに富んだ抗体を持つ子供を残すことができます。
どうやってHLA遺伝子を見分けるの?
それではヒトはどうすればそのHLA遺伝子、恋愛遺伝子を見分けることができるのでしょうか?
HLA遺伝子はそもそも外部からの侵入物(タンパク)と結びつくことで、その異物(タンパク)を認識することができます。
我々がその異物(タンパク)を認識できるのは、それが匂いのもととなっているからです。しかしながら、その匂いは無臭であり、我々の嗅覚で感知するものではありません。
それはいわゆるフェロモンと呼ばれるもので、我々はそれを脳の視床下部で感知しています。こうしてヒトはこの遺伝子を本能的に匂いとして嗅ぎ分けているのです。
異性の匂いを何気なく嗅いだときに、落ち着いたり愛情を感じたりすることがあったことがあれば、それはその異性のHLA遺伝子を感じ取り、その異性との相性がいいということになるのです。
HLA遺伝子の相性をもとにしたDNA婚活も
現在、この恋愛遺伝子を利用したDNA婚活なるものもでてきています。
婚活サービス企業であるジーンフューチャー(http://www.genefuture.co.jp/)は、顧客のHLA遺伝子と匂いの好感度をもとに遺伝子による相性を数値化してDNA婚活を進めています。
DNA婚活を斡旋している会社は、ジーンフューチャー以外にも、ジーンパートナージャパン(https://www.genepartner-jp.com/)や、NOZZ(http://www.nozze.com/)などがあります。
DNA婚活のメリットとして、遺伝子レベルでのマッチングを行うことで、より健康な子供を授かる確率が上がることです。
また、夫婦としての関係もより長く続く傾向にあると言われています。このDNA婚活では、遺伝子診断だけではなく、出身や年齢といった社会的要因も考慮に入れてマッチングを行っています。
また、このHLA遺伝子は多くの疾病や難病との関連性も明らかになってきています。
糖尿病や潰瘍性大腸炎を発病しやすいタイプなでの特定にも利用されています。
HLA遺伝子自体が発生させる匂いは無臭である
そもそもHLA遺伝子自体が発生させる「におい」はフェロモンと呼ばれるものであり無臭なのです。
それではどうしてヒトはそれを感知できるのでしょうか?フェロモンは、脳の視床下部という部分が感知し、生理的に受け入れるかどうかを判断しているのです。
「お父さんが臭い」も遺伝子に関係があった!
そこで反対の状況を示す例があります。
よく思春期の女性が父親の匂いを嫌うことがありますね。これは本能的に自分と非常に近いHLA遺伝子を父親から感じ取っていると言われており、そのにおいを“クサイ”と感知するようです。これは近親相姦を防ぐメカニズムとも言われています。
この恋愛遺伝子の研究では、1995年にスイスの動物学者であるヴェーデキント博士によるTシャツ実験が有名です。
この実験の間、参加した男性はコロンやローションなどの人工的な匂いを控え、アルコールや性交渉なども禁止されており、二日間同じシャツを着ていました。
また、女性側も月経周期の中間期に該当した女性を参加させ、最も嗅覚の敏感な時期にこの実験が行われました。
この実験では44人の男性のTシャツの匂いを嗅いだ女性の反応を見たものです。
この実験により女性は自分より一番遠いHLA遺伝子のタイプである男性を好むことがわかり、同じHLA遺伝子の型を持つ男性との相性が合悪いこともわかりました。
また、他の報告では近いHLA遺伝子をもつ人との間では、女性はオーガニズムを感じにくく、妊娠もしにくいという報告もあります。
香水や人工的な匂いは邪魔をする?
人工的な匂いは、確かに匂いとして強いものも多く存在します。しかしながら、HLA遺伝子が感じ取るようなにおいは、脳が無意識的に感じ取るフェロモンであり、生理的な感情を呼び起こします。
つまりHLA遺伝子が感じ取る「におい」は人工的な「匂い」よりも数段感度が高いものと言われています。
この記事のまとめ
このように人間も動物と同じように、より強い遺伝子をもった異性を本能的に見分けています。
その手段として使われるのが、「におい」です。においといっても、香水やコロンなどの人工的な「匂い」ではなく、我々が無意識に脳で感じ取るフェロモンと呼ばれるものです。
この匂いは、無臭であるにも関わらず、脳の視床下部でしっかりと感知されています。
これは、HLA遺伝子であり、また恋愛遺伝子とも呼ばれています。
この遺伝子により、ヒトは、無意識のうちに、自分とは異なる遺伝子タイプの異性を選び、より遺伝子レベルの高い子孫を残そうとしています。
現在ではこの恋愛遺伝子を利用したDNA婚活も存在し、我々の生活にもより身近になってきています。
豊川弘治
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